3度目のNanie(哀悼歌)

どうも、幽民です。
つい1か月前まで半袖ノーネクタイで汗をダラダラかきながら歩いていたと思ったら、
今晩は気温が10℃を切って寒い…
徐々に気温が下がってくれればいいのに、極端すぎるな、気温と季節の変化が…
秋がすっ飛ばされた…
明日はコートを出さねば…

さて、残りのステージがブラームスの“Nanie”(哀悼歌)(本当はaの上に¨(ウムラウト)がつきます。)に決まりました。ご覧のとおり、歌詩はドイツ語です。そしてこの詩を作ったのは、ベートーベンの『第九』の作詩者と同じ、フリードリヒ・フォン・シラーです。
実は、個人的には田中先生の指揮で歌うのは初めてです。
1回目は25年前、学生3年目の時、当時いた大学合唱団が加盟していた6大学の合唱連盟(埼玉大、横浜国大など)の2泊3日の合宿で、毎年テーマ曲を決めて練習、仕上げをするということをやっていて、その年に取り上げたのがNanieでした。
当時使った楽譜には、色々と熱心に書き込みをしていた形跡がありました(今はどうなんだというツッコミが入りそう…)。

2回目は新宿混声に入ってから10年目の時、12年前の34回定演で、伊藤栄一先生の客演指揮で歌いました。

そして今回が3回目で田中先生の指揮で歌うことになりました。このいい曲をちゃんとまた歌う機会に恵まれました。

昔、初回歌った時熱心に書き込みされた楽譜を見ながらこの曲を辿って見ましょう…。

美しいピアノのアルペジオから、ちょいと長めの伴奏で始まり(本当はオーケストラですが、今回はピアノで)、ひとしきり演奏したところで合唱への導入…

「美しきものも死すべき運命にある、人間や神々をも圧倒する美しきものも!(美しきものといえども)冥府の大王の頑なな心を動かすことはできない。」
この導入部分は、この曲で最も言いたいこと、テーマを始めに提示しています。

「ただ一度だけ愛は冥府の大王の心を和らげたが、無情にも厳しく彼はその贈り物を呼び戻してしまった。」
これは蛇に噛まれて死んでしまった愛するエウリディーチェを失ったオルフェオが、冥府の大王プルートに懇願して彼女をやっとの思いで取り戻してもらうことになったのだが、プルートと約束した、冥府から地上の出口までに至るまでの間、決して後ろを振り向いてはならぬという掟を、地上出口寸前になって破ってしまったため、折角プルートからの“贈り物”であるエウリディーチェを取り上げられ、冥府に戻されてしまったという、ギリシャ神話に基づいています。
そういえば、わが国の古事記にも、イザナギが、日本列島や諸々の神をを産んだ後、火の神を産んで大やけどをして死んでしまったイザナミを黄泉の国まで追っかけて、連れ戻そうとしたが、やはり姿を見てはならぬというイザナミとの約束を破って振り返ったために黄泉の国を追われたという話が…何かつながってるのかなあ、ギリシャ神話と日本神話って…

「アフロディーテも美少年の傷を治すことができなかった、彼の美しい肉体に無残にも猪がつけた傷を。」
これもまた、美の女神アフロディーテが愛した美少年アドニスが、猪狩りの際に槍を猪に突いた直後、その猪に逆襲され、コケたところを猪の牙に突かれて死んでしまうという神話から取られています。
猪はここでは醜いものの象徴として挙げられており、アドニスの珠のような美しい肉体によくも傷をつけやがって、といわんばかりに歌えと、学生の時にはそのようなご指導を頂いた気がします。
猪といえば、ヤマトタケルが伊吹山の神の猪を素手で倒して見せると息巻いて、猪は倒したものの、自らも深手を負って大和に帰る途上絶命するという話を思い出した…

「不死の母(テティス)も遂に神のような英雄(アキレス)を救えなかった、トロヤの門に倒れて天命を全うする時に。」
トロヤ戦争にて、足首を矢で射抜かれて死んでしまった(正確に言うと足首を矢で射られた次の矢で胸を射抜かれて絶命した)英雄アキレスを、その母テティス(海神ネレウスの50人の娘のうちの1人)が嘆き悲しむという神話によります。
この「…トロヤの門に倒れて…」の部分は、同じブラームスの「運命の歌」に出てくるような“運命の動機”…音形が徐々に上昇して行って、緊張感を高める音楽的演出がなされています。
(ここでは音程が4度上がって3度下がるのを繰り返して音形が上昇しています)

「だが彼女(テティス)は父ネレウスの娘達の皆と共に海より出でて、その嘆きの声は誉れ高き息子(アキレス)を包み込む」
という歌詩が、ピアノの右手が“海の波の表象”として鳴らしている3連符に乗せて歌われます。

「見よ、神々が泣いている、女神達も皆泣いている。美しきものが滅びゆくのを、完全なるものが死するのを(見て)。」の歌詩が2回繰り返されます。
“泣いている”という様が印象に残るように“weinen”の“w(ヴ)”はしっかり出すように心がけたいですね(笑)。

再現部は冒頭と同様、ピアノのアルペジオから導入されますが、冒頭の、美しいものもおしなべて死すべき運命にあるという厳しい現実の提示とはまた違った性格になっている、即ち、死んで滅び行く美しいものを嘆きたたえることへの賛美に変わっていると、以前歌った時に言われたことがあります。次いで以下のまとめの歌詩が歌われます。
「嘆きの歌が愛する者の口にのぼることこそ素晴らしい、なぜなら俗人には送別の歌もなく、独り黄泉の国へと降りて行く運命だから。」
私の当時の楽譜には、「素晴らしい」という意味の“herrlich”のところに、『うーん、幸せ。』と書き込んでありました(笑)。
これが、学生の連盟合宿の時に指導者からのコメントによるものなのか、それとも私が勝手に『うーん、幸せ。』と感じて歌うべきだと思って書き込んだのか、最早記憶がありませぬwww

ヤットコサ音取り、ドイツ語の読みをひととおりさらったばかりです。
皆さん、まだ間に合いますよwww

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コメント

  1. やっち より:

    連日、「今シーズン1番の冷え込み」 を更新してますね。 10月12日に31.3度を記録したのが嘘のよう。
    急激な気温の変化で体調を崩さないよう、団員のみなさん気をつけましょう。 月末の合宿には体調万全で臨まないとね!

    さてさて、幽民さんの 「Nanie」 解説、面白かった(^▽^)
    あとで楽譜を広げながら読み直そうっと。

    今日は朝から昨日やった 「バナナを食べるときのうた」 が頭の中でグルグル回り続けてて困った(@◇@;
    幽民さんの 「ウー!!」 と、ノリノリで指揮する練責の姿付きだもの。
    (幽民さん、「ウー!!」 は、う~にさんも狙ってますヨ)

  2. ちー丸 より:

    幽民さん、とても面白く、勉強になる解説ありがとうございます!
    曲の解釈や背景・・・とても大切なことですね。
    幽民さんは3回目ですか!すごいなぁ。今回はどんな景色が観えるのでしょうね。

    重要な歌詞、「素晴らしい!」は「う~ん、幸せ♪」なのね。
    カワイイ書き込みに笑えました^^

    久しぶり?のブラームスでとても美しい旋律に癒されますよね。
    お客様に癒しの時間をすごしていただけるよう頑張らないと!
    とはいってもま~だまだこれから・・・
    時間をかけて私たちの〝Nanie〟にしていきたいと思います。

  3. う〜に より:

    「ウー!!」は別に狙ってはいないですよ。ただ「やってみたいな~」と思ってるだけです。

    Nanieの解説、圧倒されました。恐るべきウンチクの量!
    私も図書館でギリシャ神話の本を借りて読んでみました。
    終盤になって、実際の歴史と結びついて来たり、日本の神話との共通点が多いことに壮大なロマンを感じます。

    Nanieの歌詞のクライマックスは、トロヤ戦争ですね。
    トロヤ戦争といえば、映画「トロイ」を思い出します。
    ブラッド・ピットがアキレスを演じてましたね。
    完全な美男子ぶりでした。実にいいキャスティングだと思ってます。
    映画の中では自分は神の子孫なんかじゃないとあっさり否定してたのが印象的で面白かった。
    あくまで神話としてでなく、史実寄りの世界観で作ってますと宣言された感じで…。

    私はNanieを歌うのは二度目です。
    が、いまだにどう歌えば良いのか、つかみかねております。
    来年5月には自信をもって歌えるように精進いたします。

  4. にょぎ より:

    う〜にサン、「やってみたいな〜」と思ってるっていうのは、完全に狙い澄ましている…という事なのではないか、と。仲良しなお2人の「ウー!!」争奪戦、楽しみにしております ^_−☆ (実は他にも密かに狙ってるヒトが居たりして⁈ )

    ネニエは、知れば知るほど、歌えば歌うほど、その奥深さと壮大さを新たに発見し、歌う事に夢中になってしまう曲ですね!

    今年度も年明けから瀬山先生にもご指導頂く機会がありますが、いったいどんな新たなネニエを教えて頂けるのか…、今からとても楽しみに、ワクワクしております ♪ ・・・チョッピリ恐れもありますが (^◇^;)

  5. シヨウヤマ より:

    幽民さん
    これは、もうプログラムではないですか?
    発表会のプログラムはこのままでもいいのではないのでしょうか。
    本当に奥が深いですね。
    すごいですね。
    演奏曲が決まると、いろいろな事を知ることが出来ます。
    又、同じ曲を三回目とは、すごいですね。
    同じ演奏会はないのですから、それぞれの味わいを得ているのですね。
    通常 第九など何度も同じ曲を演奏することは、ありますが・・・
    Nanieを三度目とは・・
    長く歌っているのですね。
    来年の演奏会では、どういう演奏になるのか。
    私は最初です。
    練習すればするほど、難しくもあり、楽しくもあります。

    恐らく4ステージ目になるのではと思います。
    しっかり歌い上げ、拍手をもらえるように頑張りたいものです。
    新宿混声は11月30日・12月1日にかけて一泊二日の合宿に入ります。
    合宿は練習漬けになります。
    普段の練習の何倍もの効果が期待できます。
    練習後の夜のレクリエーションも楽しみなんです。
    皆で、”同じ釜の飯” をすると”ア・ウンの呼吸”も出るのを楽しみにしています。
    これからは、体調に気を付けて、行きたいものです。

  6. 来夢 より:

    本日の演奏会で聞かせていただきました。
    こちらのブログに先にお邪魔すればよかったと思っています。
    ブラームスはメロディーがとマエストロが言われましたが、
    メロディーも素晴らしいなと思いました。