「スティーブン・フォスター」

来年、2014年5月25日(日)に開催される、
「新宿混声合唱団」第48回定期演奏会は、
全部で4ステージあります。

その内のひとつ、「フォスター」を取り上げ、
1.「夢路より」(1862年)
2.「おゝスザンナ」(1848年)
3.「懐しの我がケンタッキーの家」(1853年)
4.「ネリー・ブライ」(1850年)
5.「故郷の人々(スワニー川)」(1851年)
6.「草競馬」(1850年)
を演奏する予定です。
(  )内は作品発表年。(演奏順番は未定)

みなさん、良く耳にして知っている曲ばかりですね。
今回これらの曲を、
日本語(津川主一氏訳)により無伴奏で演奏します。

よく「無伴奏」のことを「アカペラ」だと思われがちですが、
厳密に言うと「アカペラ」=「無伴奏」ではありません。

詳しくは述べませんが、
「アカペラ」(イタリア語 a cappella)は、
イタリア・ルネサンス期の教会音楽からきており、
「アカペラ」でも、
歌のメロディーをなぞる程度の
簡単な伴奏をつけて歌う場合もあるそうです。

さて、話が逸れましたら、これらの歌を作曲した、
「フォスター」について調べてみました。

本名は、スティーブン・コリンズ・フォスター
(Stephen Collins Foster)
1826年7月4日生まれで
1864年1月13日に37歳の若さで生涯を閉じました。

 フォスター写真

↑フォスター

フォスターが生まれた1826年7月4日というと、
「アメリカ独立記念日」で、
ちょうど、50周年の記念すべき日に生まれた。

その頃の日本はというと、
江戸時代で鎖国の真っ最中の
文政9年である。

その3年前の文政6年(1823年)に、
ドイツ人シーボルトがオランダ商館員として来日。

フォスターが生まれた前年、
文政8年(1825年)には、
江戸幕府が「異国船無二念打払令」が出され、
日本の沿岸に接近する外国船は、
見つけ次第に砲撃し、追い返したという。
また上陸外国人については逮捕を命じている。

そして、黒船が来航したのが1853年ですので、
それより27年も前にフォスターが生まれていた。
因みに、同年には、
「懐しの我がケンタッキーの家」を発表している。

黒船来航

↑黒船来航

フォスターは、生涯に約200曲を作曲している。
多くは親しみやすいメロディで、
黒人歌、農園歌、ラブソングや郷愁歌を作曲し、
「アメリカ音楽の父」と言われている。

生まれたのは、
ペンシルベニア州現在のピッツバーグ市(生まれた当時は隣町)で、
アイルランド移民の家系を引く
比較的裕福な家庭の10人兄弟の末っ子として育つ。
ピッツバーグ場所

↑ピッツバーグの場所

父は、ヴァイオリン演奏の趣味を持ち、
母は、教養に富む女性であったそうである。

フォスター自身も幼児期から音楽的才能を見せ、
7歳からは横笛を弾き、9歳からはギターを独学で習い、
後にはクラリネットも吹いていたという。

10代の頃には、ドイツからの移民してきた、
ヘンリー・クレバーから本格的な
音楽教育を受けていたという。

ヘンリー・クレバーは、
ピッツバーグ市にある女学校の音楽教師で、
同市で楽器店も経営していた。
当時のピッツバーグで
最も音楽に長けた人物であったという。

ヘンリー・クレバーから刺激を受けたフォスターは、
友人らと男性コーラスグループを結成していた。

週に2回集まって、
当時流行していた曲を歌ったり、
街へ出てお屋敷の下でセレナードを弾く
(今の路上ライブ?)などの活動を行っていたそうである。

この頃歌われていた曲の中には、
フォスター自身が作曲した曲も多く含まれていて、
「おゝスザンナ」の曲もあった。

後にフォスターが有名になってから
出版社の引き合いを受けて出版されている。

「おゝスザンナ」が発表されたのは、
1848年でフォスターが22歳の時であるが、
10代の時に既に作曲していたと思われる。

フォスターの曲は、
「故郷の人々」はフロリダ州歌、
「懐しの我がケンタッキーの家」は
ケンタッキー州歌にもなっている。

フォスターの伝記
「ドゥダー!スティーブン・フォスターとアメリカ大衆文化の興隆」の
著者ケン・エマーソンさんは、
「ロックンロールを研究していてフォスターに辿り着いた」と、
ロックンロールの原点をフォスターに見出したという。

しかし、フォスターは不運な運命を辿る。
父親の事業が行き詰まり、幼くして生家を去ったフォスターは、
転々と住居を替え、
ニューヨークで貧困のうちに孤独の死を遂げた。

死亡した時には、
38セント分の紙幣と硬貨で、
「親愛なる友だちとやさしき心よ」
(dear friends and gentle hearts)と
走り書きされた紙片だけが残っていた。

フォスターの死を知らされた妻ジェニーは、
遺体と対面するやその場で泣き崩れたと伝えられている。

こんな才能ある作曲家であったにも関わらず、
当時は著作権という概念はなく収入は限られて、
晩年は貧困と酒びたりの生活を送った。
惜しくも37歳で生涯を閉じてしまった。

フォスターの死後2ヶ月後、
1862年の作品「夢路より」が発表された。

亡骸は、
ペンシルベニア州ピッツバーグの
「アレゲーニー墓地」に埋葬されている。

この当時から著作権が確立していたら、
フォスターも裕福な生活が送れて、
もっと素晴らしい作品を数多く作曲出来たのかもしれない。

こうした時代を背景にした作品であることを
私たちは、噛みしめながら歌いたいと思います。

さて、「新宿混声合唱団」は、
このフォスターの作品から3曲選んで、
10月に開催される
「音楽・コーラスのつどい」で演奏する予定です。

詳細は下記の通りです。

【日 時】 10月19日(土)11時~17時
新宿混声合唱団の出演は、35団体中最後から3番目で、
午後4時50分頃からの予定です。
【会 場】 新宿文化センター 大ホール(新宿6-14-1)
【主 催】 公益財団法人新宿未来創造財団
新宿区の文化祭で、「新宿区生涯学習フェスティバル」の
一環として開催される。

演奏する曲目は、
「おゝスザンナ」
「懐かしの我がケンタッキーの家」
「草競馬」
の3曲です。

みなさん、お時間があったら
是非我々の演奏を聴きに来ていただければ幸いです。
そして、随時、見学も受け付けています。

最近、毎週見学者が来ていただいています。
大変有り難いことです。

みなさんも、是非、勇気を出して、
「新宿混声合唱団」の門を叩いて下さい。

団員一同、心からお待ちしております。

では、また!

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コメント

  1. はったん より:

    おいちゃん!
    「フォスター」について詳細にお調べいただきありがとうございます。
    私もいつも新しい曲に出会った時は一応作詞者や作曲者についてざっと調べますが、おいちゃんのは素晴らしい!!

    日頃は楽譜の音符とにらめっこで、強弱記号や表情記号に気を取られながら必死で暗譜に挑戦していますが、作者の生い立ちやその後の人生等を想いながら歌うと歌い方も全然違ってくるでしょうね。

    演奏会にはそれぞれの作者の気持ちが伝えられるように一生懸命歌いたいと改めて思いました。

  2. ひろりん より:

    おいちゃん、フォスターについて詳細に調べて下さってありがとうございます!!

    音楽の教科書でお馴染のフォスター、その写真は、ちょっとハンサムなアメリカ人。
    そこに、貧困や孤独は感じませんね。
    彼の最期もボンヤリと記憶に残っていました。

    若いころには感じることの出来なかった哀愁みたいなもの。
    美しいメロディーにのせて歌えたらなあと思っています。

    「懐かしの我がケンタッキーの家」 何だかジーンと胸に迫ってきます。
    歌っている私たちが感動するだけじゃなくて、聴いて下さる方に思いが
    伝わるように、技術を磨いていきたいと思っています。

  3. やっち より:

    おいちゃん、詳しい情報ありがとうございます。
    今回フォスターをやることになって、私もちょちょっと調べましたが、そこで初めて不遇の人であったことを知り驚いています。
    だって、フォスターというと牧歌的で楽しい歌が多く、不幸な感じとはほど遠いんだもの。
    150年以上も経った今でも、国境を越えてこんなに親しまれ歌い継がれていること、スティーブンに教えてあげたいですね。
    19日の 「音楽・コーラスのつどい」 で、多くの人にフォスターの良さを感じてもらえる演奏が出来たら嬉しいな。

  4. にょぎ より:

    私も、おいちゃんの記事を読んで、フォスターがこんな生涯を送った人なのだと初めて知りました!
    芸術家って、世に認められるのは、本当にタイヘンなんですね。。。

    19日の合唱祭で歌うのは、3曲だけですが、持ち時間いっぱい、楽しく美しいフォスターの世界を表現出来るように、シッカリ暗譜して頑張ります(=´∀`)♪

  5. やぎ より:

    新入団員の私には、ニックネームだと誰が誰だかさっぱり・・・

    さて、フォスター情報ありがとうございます。私も合唱を始めるまではフォスターのことなど全く知りませんでしたが、今は歌曲集まで持っているオタクになって(笑)

    今回は歌いませんが、私は「オールド・ブラック・ジョー」が大好きです。優しいメロディーに癒やされます♪

    初ステージ、柔らかく優しい声で当日歌えるよう頑張ります。
    (^_^)

  6. 香り水仙 より:

    おいちゃんさん、ありがとうございました。
    今日もフォスターの練習でしたが、彼の生涯が思いのほか不遇の作曲家だった事を知ってちょっとびっくりでした。
    でも庶民的な親しみのある歌が多く、ずっと歌い続けられているってすごいことだと思います。心して歌わねば^^;。