林光と映画音楽

定演が終わって早1か月余り。
現在は、林光さん作曲の「岩手軽便鉄道の一月」を練習しています。

新宿混声で私が歌ったことのある林光さんの作品と言えば、第29回定演(1996)の「日本抒情歌曲集」と「木のうた」が挙げられますが、今回の「岩手軽便鉄道の一月」は、曲によっては割と「木のうた」に近い作りをしてるところが見受けられます。

林光さんは、昨年自宅前で転倒したのが原因で療養生活を送っていましたが、残念ながら今年の1月に、80歳の生涯を終えることとなってしまいました。

林光さんと言えば、「オペラシアターこんにゃく座」の音楽監督や作曲にも携わっていましたが、個人的には、映画やTVドラマの音楽にも深く関わっていた方という印象が強くあります。

10年くらい前でしょうか、都内のCDショップで「林光の世界」という、林光さんが作曲した代表的な映画のサウンドトラックを集めたCDを買って聴いたら、これが実に面白い!!!
今度はレンタルビデオ屋に行って、この曲を扱った映画のDVDを借り、改めて見直してみるという衝動に駆られたほど、実にアトラクティヴな曲を書いているなという思うようになりました。

林光さんは、やはり今年5月に100歳の天寿を全うされた新藤兼人監督から特に多くの映画音楽を依頼され、作曲していますが、曲も、映画も非常に面白い作りをしているものが多い。

特に私が好きな曲及び映画は、「裸の島」(1960)と、「鬼婆」(1964)です。

「裸の島」は、離島に住んで農耕生活を送る家族(殿山泰司、乙羽信子、及び子役)の四季と人間模様を、全編モノクロ・サイレントという手法で撮ったもので、テーマ曲や挿入曲も、場面ごとの情景や登場人物の心象を活かした作りになっています。この映画は数々のモスクワ国際映画祭グランプリなど、数々の賞に輝いた、新藤監督の代表作となりました。

「鬼婆」は、南北朝時代が舞台と言われており、戦乱で流れてきた落ち武者を罠にはめて殺し、刀や武具を略奪して生活の糧とする追い剥ぎ女とその嫁(乙羽信子、吉村実子)、また嫁を誘惑する若い男(佐藤慶)との愛欲及び人間臭さを色濃く描いたものです。
ここで使われたタイトルバックが、「ドンドコドコドン、ドコドコドコドン、ドンドコドコドン、ドコドコドコドン、ビシッ、“ア゙ー”」という、打楽器と、鞭と、人間の悲鳴を用いた、非常に強烈な曲で、最初聴いたときは大爆笑してしまいました…ちなみに、“ア゙ー”という悲鳴を担当したのは観世栄夫さん(能楽師、俳優)とのことです。

他にも、「人間」「強虫女と弱虫男」「心」「濹東綺譚」「午後の遺言状」など、新藤・林コンビの作品が数々あります。

皆さんも、音楽から映画の世界へと、見る目を拡げてみては如何でしょうか。

…今回は実にマニアックな話になったなあ(笑)…

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コメント

  1. やっち より:

    幽民さん、趣味が広いですねぇ。 映画見ながら、「ア”ー」 とか真似しないでね(^▽^;

    林光さんって、私初めてです。
    初めに練習した 「グランド電柱」 や 「岩手軽便鉄道の一月」 が変わったメロディだったので、そういう作風の方なのかと思ったら、「ポラーノの広場」 や 「祈り」 はまったく違うので驚きました。
    今はまだ、やっと覚えた音とリズムを頼りに必死で歌ってますが、余裕をもって歌えるようになったら楽しいでしょうね。(まだまだずいぶん先のことかなあ・・・)

  2. はったん より:

    先日、「岩手軽便鉄道の一月」を歌うという事だったので、某大学の合同演奏会を聴きに行ってきました。
    舞台には10数名の団員が上がり、「え~、こんだけ~!」と思いましたが、アルバムの中から4曲を歌いました。
    人数が少ない分、さすがに声が揃っていてミスは許されない。
    心に染みいる良い演奏でした。
    さて、われわれ40名以上がこの曲を歌うのはどうだろう?
    曲は比較的簡単だが、だからこそ難しいのですよね~
    皆が気持ちを一つに出来るか!?・・・・
    頑張りましょうね!

  3. シヨウヤマ より:

    新宿混声合唱団は毎年、定期演奏会を開いています。
    第45回の記念演奏会を5月27日(日)に終えすぐ5月29日(火)からは、もう新しい曲に取り組んでいます。
    毎回各ステージその作詞・作曲家の人物像やらに接し、少しずつ新しい知識やら、歴史を学んでいるのです。

    今回第46回定期演奏会に向け(来年5月19日・新宿文化センター)宮澤賢治作詞・林光作曲の”岩手軽便鉄道の一月”という曲に取り組んでいます。
    宮澤賢治の人物像を知れば知るほど、すごい先見の明があるとか、今にも通じる考え。想像力が豊かな方だと知りました。
    あのアニメの銀河鉄道の元だったとか、すごいですね。

    ”星めぐりの歌” ”ボラーノ広場のうた” ”グランド電柱” 岩手軽便鉄道の一月” ”祈り” ”海だべがど”題名も特別です。
    練習にも引き込まれます。
    また、急に”OTAKU”ではないのですが、深く・詳しく・調べて情報を伝えてくれる人もおり(もちろん団員です”又そのレポートが興味深いのです。
    レポートを印刷して時々眺めています。

    来年の定演には、皆さんも興味を持って聴きに来てください。
    又、一緒に歌いたいと思う方も大歓迎です。
    是非のぞき(見学)においでください。
    一緒に歌いましょう。

  4. ちー丸 より:

    幽民さんの造詣の深さに脱帽です!^^
    そっち方面の知識が浅いので、
    読みながらひたすら『へぇ~~(・○・)』状態の私でした・・・。

    今回の「岩手軽便鉄道の一月」は、
    宮沢賢治といい林光といい、はまったら奥は深いぞ!って感じですね。
    あっ、もうはまってるかな?・・
    だって詩もメロディも楽しくて面白くて、そして美しいんですもん!

    あらためて、興味深い方たちの楽曲を歌うことができて
    嬉しく思っています。